【Part③の補足】大学事務職員への転職Part⑥(転職情報サイトに潜む罠)
本サイトと同じような内容を掲載している他サイトを覗いてみたところ、なるほどと勉強になる内容もたくさんあるなと感じる一方で、流石にミスリードとしか言えないような内容もいくつか見受けられました。
そこでここでは、“大学職員を目指す上で、google検索の上位に出てくるサイトを参考にする際の注意点”を解説したいと思います。
内容としては志望動機の構成に関することがメインなので、Part③の補足と思ってください。
志望動機で「安定した職場でじっくり働きたい」は完全NG
サイト名「キャリアガーデン」(該当ページURL:https://careergarden.jp/daigakushokuin/shiboudouki/)
2020年9月6日時点において、こちらのサイトでは大学事務職員の志望動機の例として「安定した職場でじっくり働きたい」ということをピックアップしていますが、これは完全に真逆です。
働く環境であれ待遇であれ、安定性を求めていることを少しでも匂わせたら即NGくらいに思っておいた方が良いです。
なぜなら社会変動が大きくスピーディーな現代日本において、大学もそのような社会の変化に対応した運営を進めていかなければいけませんが、如何せん大学という組織は意思決定や行動がスローです。そのためどの大学も、(特に新戦力の)事務職員には主体性や新しいことに積極的に挑戦するスタンスを求めており、大袈裟に言えば“変革の担い手”くらいに考えています。
そこに来て「安定した職場でじっくり働きたい」ととれる発言なんてしたら、面接官に“変化への対応や業務改善、主体的な働きなどはあまり期待できない”という印象を与えてしまい、今の大学で求められる人材像から大きく逸脱してしまいます。
ですのでこのサイトの当該記事は完全なミスリードです。気をつけてください。
というかこのサイトは、上記以外にも志望動機の例として「非営利組織で教育現場に関わる仕事がしたい」とか「専門的な仕事がしたい」ということを挙げていますが、いずれも的外れですし、内容もこんな薄っぺらくて選考を突破できるとは到底考えられません。
これらを読んだだけで、この記事を書いた方は“大学職員を経験したことがなく、大学職員採用試験の経験も少なければ選考通過実績とそのノウハウもほとんど有していない”ということが伺えます。web広告が大量に貼り付けられていることからも、私はweb広告収入目当てのライターが適当なことを書いたのだと思っています。
もしかすると2020年9月6日以降、このページを見たサイト運営者が当該ページを修正するかもしれませんが、大学事務に詳しくないサイト運営者の焼きごて記事だと思っているので、私としては、このサイトは全てにおいて信憑性が限りなくゼロに近いと思っています。
有名転職サイトの例文は参考外
サイト名「マイナビ転職」(該当ページURL:https://tenshoku.mynavi.jp/knowhow/shibodoki/job07)
マイナビといえば言わずと知れた超大手転職サイトです。求人掲載のみならず非常に便利なコンテンツを多数用意してくれています。
その中にはあらゆる職種・業種への転職を想定した「志望動機・理由の書き方・伝え方」というコンテンツがあり、その中には大学職員向けのものもあります。
しかし、超大手のこういったコンテンツには得てして“当たり障りのない一般論”しか書かれていません。
確かに転職をプロデュースするプロ集団が書いた記事ですので、一見すると“それっぽい”内容に仕上がっていますが、中身はかなり薄っぺらいです。
おそらく実態をきちんと捉えた上で書いているわけではなく、転職支援の経験とノウハウをたくさん持っている転職のプロが推測で書いたものだと思っています。
なので耳障りは良いものの、現場で働く人に響く内容にはなっておらず、実戦では全然使えない“砂上の楼閣”という言葉がぴったりの内容です。
私も大学職員ですが、実際に読んでいて全く響きませんでした。上っ面は良いけどそれだけという感じです。もし私が書類審査員や面接官だったら「作文の上手い人」とか「かっこいいこと言いたいだけの人」とは思うでしょうが、一緒に働きたいと思うかどうかは全く別です。
ただ、“マイナビ”の看板が大きすぎるせいで、多くの人は「マイナビがそういってるなら間違い無いだろう」「他の誰だかわからない人のサイトより、マイナビの方が信頼できるだろ」と考え、ついついマイナビ転職で掲載されている内容を重視してしまうと思います。
しかし見本のような理論整然とした職務経歴書を作りたいなら参考にしても良いと思いますが、必要なのは見栄えの良い職務経歴書ではなく、試験官の琴線に触れる職務経歴書です(もちろん作りがきれいに越したことはないですが)。
そういった意味ではマイナビは参考外で良いと思っています。くれぐれもネームバリューに惑わされないように気をつけましょう。
出身大学かどうかは有利不利に全く関係無い
サイト名「就活の未来」(該当ページURL:https://shukatsu-mirai.com/archives/101493)
このサイトの当該ページでは“大学職員の志望動機の注意点”を2つ挙げており、そのうち一つが“出身大学以外は接点を見つける”というものです。
2020年9月6日時点の同記事を原文ママ引用します。
「出身大学以外は接点を見つける
大学職員を目指す場合は、まずは出身大学での志望を考える人が多いです。出身大学であれば、大学との繋がりもあり、大学についての理解度も高いと判断されやすいため、選考でも有利になりやすいです。
しかし、出身大学以外を志望する場合は、なぜ出身大学を選ばないのかと思わえてしまうため、明確な理由を用意しておかなければなりません。ポイントは、志望先の大学と何らかの共通点を見つけることです。
共通点が全くないと、なぜ志望したのかを明確にできないため、アピール力は弱くなってしまいます。就職しやすさを考えるなら出身大学を選ぶべきですが、他の大学に就職したい場合は、どんなに小さくでも構いませんので共通点を見つけておきましょう。」
はっきり言います。これは完全に間違いです。めちゃくちゃなミスリードです。
目を疑うほどの内容なので少し丁寧に解説します。
- 「出身大学であれば、大学との繋がりもあり、大学についての理解度も高いと判断されやすいため、選考でも有利になりやすいです。」
→1mmも有利になりません。その大学の理解度を確認するならエントリーシートや面接で行います。「大学との繋がりがある=大学に対する理解度が高い」なんて解釈をする大学も面接官も存在しません。暴論もいいところです。
また、出身大学だと学生目線でその大学のことを知っているので、自分の学生時代のエピソードが有利に働くと思う人もいるかもしれませんが、それも論点ではありません。“学生として知っている”というのは、話のネタがあるため志望動機を「作りやすい」という側面はあるかもしれませんが、それは「受かりやすい」とは全く別物です。
受かるかどうかで重要なのはあくまで“自分が、大学が求める人物像に当てはまっているかどうか”や“自分が職場に求めているものがその大学にあるかどうか”です。要するに双方のニーズがマッチしているかです。
当然、出身者かどうかとそれらがマッチしているかは全く関係ありませんので合否への影響は皆無です。
ですので選考の通過基準も面接官の思惑も完全に的外れですので絶対に真に受けてはいけない一文です。
- 「ポイントは、志望先の大学と何らかの共通点を見つけることです。共通点が全くないと、なぜ志望したのかを明確にできないため、アピール力は弱くなってしまいます。就職しやすさを考えるなら出身大学を選ぶべきですが、他の大学に就職したい場合は、どんなに小さくでも構いませんので共通点を見つけておきましょう。」
→全然ポイントじゃありません。気持ちいいくらいに片っ端から間違ってます。あまりにひどすぎて言葉を失うレベルです。。。
自分の出身大学と共通点がないと志望動機が明確にできないとかアピール力が弱くなると勝手に決めつけていますが、むしろ共通点の有無こそ志望動機の明確化にもアピール力にもいっっっっさい関係ありません。
繰り返しになりますが大事なのは大学と求職者の双方のニーズがマッチしているかどうかです。そのためポイントは、その大学のことをきちんと理解し、その上で自分はどんな価値観を持っていて、その大学のどんなところに魅力を感じたかを自分の言葉で説明できるかどうかです。魅力を感じた部分(実際には魅力を感じてなくてもいいのですが)が出身大学と共通している必要は一切ありません。
また、先述の通り、出身大学だからといって就職のしやすいということもありません。
ちなみに各ページの一番下にサイト運営者のプロフィールが掲載されており、どうやらこの記事を書いた方は以前マイナビで働いていたキャリアアドバイザーの方のようで、おそらく転職支援の実績やノウハウは豊富に持ち合わせているのだと思います。しかし、少なくとも大学職員への転職活動に関してはあまり詳しくなく、この方の経験から推測で書いている感じがひしひしと伝わります。
ただしマイナビと決定的に違うのは、“一部、明らかに的外れ”という点です。
マイナビは中身が薄く、実用性は非常に低いですが間違ったことはあまり言っていません。しかしこのサイトはここで紹介した記事がそうであるように、一部明らかに読者に誤った情報を提供し、読んだ人を不利する内容を掲載しています(私は非常に無責任だと思っています)。言うなればマイナビは「毒にも薬にもならない」ですがこのサイトは「毒が仕込まれている」という感じです。ですのでどんなに優秀そうな人が書いたものであろうと、グーグルで検索したら一番上に出てこようと、あまり信用しないほうが良いサイトだと思います。
例文集
サイト名「就活の未来」(該当ページURL:https://shukatsu-mirai.com/archives/82086)
サイト名「大学職員に就職・転職する方法」(該当ページURL:https://hspindex.com/2018/02/11/618/)
これは例文そのものがおかしいという話ではなく(まあおかしい例文も結構ありますが)、例文を参考にする際の注意点という話です。
私もこのサイトのPart4に私が実際に書いて選考を通過した志望動機を列挙していますが、例文をあまり参考にしすぎるのはよくありません。
どういうことかというと、例えば「就活の未来」の例文集の中に以下のような例文があります。
「私が貴校に就職を希望する理由は、貴校の「自ら考える人材を育てる」という教育理念に魅力を覚えたからです。また大学事務という職業が様々な業務や人々と関わることになると知ったため、元々学生生活の中で人と関わることに魅力を感じていた私には、非常に意欲を感じられる職業だと思っております。貴校に就職した際には、学生の大学生活をより豊かなものにできるように、自分でも大学を良い環境にするための業務を考えながら職務をおこないたいと思います。」
上でも述べたように当該サイトは的を得てない上に中身が伴っていないのでそもそもこの例文も参考にならないレベルなのですが、それは今は置いておくとして、もし試験官がこの志望動機を読んだらどんなことを考えるでしょうか。
「なぜ自ら考える人材を育てるという教育理念に魅力を感じるんだろう?(=どんな価値観?)」「なんかエピソードあるのかな?」「人と関わることの魅力って?」「それって大学じゃないと、もっと言えばうちの大学じゃないとできないの?」「大学を良い環境にするってどうやって?」「そもそも良い環境って?」
などなど、他にも様々な疑問を持たれます。
仮に上記のような質問をされたとして、“事前に回答を用意せず、自分の言葉で”答えられますか?
この“事前に回答を用意せず、自分の言葉で”というのがポイントです。(※実際には対策ゼロで臨むなんてことはありませんがここでは話をわかりやすくするため極端な表現をしています)
もしこの志望動機が本心なら(本心じゃなくてもいいですが)、極端な話、友達との会話のように言葉というのは自然と出てくるものです。少なくとも試験官はそう思っています。上手い下手ではなく、自分の言葉でということが非常に重要で、逆にどんなにお手本のような志望動機を述べても少し掘り下げただけで言葉に詰まったり、セリフのような無機質な内容では“本心じゃない”と思われます。
わかりやすくイメージするなら、例えば友達と映画を観に行って、観終った後に「映画良かったねー!」「そうだね!」という会話をしていて「どこが面白かった?」とか「あのシーン良かったよね!」という話になっても、本当に映画を観ていて良かったと思っていたら「私はあのシーンで感動した」とか「うーん、私はそのシーン微妙だったなー」など、自然と言葉が出てくるはずです。反対に、実は寝ていたり本当は面白いと思ってなかったとしたら、えーっと、うーんとと言葉選びをすることになると思います。
このように、本心じゃないとそれは態度に出ますし、相手にも伝わります。
何が言いたいかというと、確かに例文集は参考にしやすいのですが、それらをもとに安易に「◯◯に共感しました」とか「▲▲に魅力を感じました」なんて言っても、耳障りがいいだけの薄っぺらいフレーズを並べただけでは相手の琴線には触れないということです。
もちろん、そうは言っても本心では待遇などに魅力を感じたことが志望動機という人の場合、どうしたって作り物の志望動機を用意しなければいけません。ですのでPart3にも書いたように、「その大学に魅力を感じているキャラクターを設定し、それになりきる」ということが大事になってきます。例文集は参考になるかもしれませんが、大事なのは耳障りの良いセリフを並べることではありませんので、あまり参考にしすぎないことが大事です。
最後に
今回、閲覧時に注意が必要なサイトとして「キャリアガーデン」「就活の未来」「マイナビ転職」などを挙げましたが、これらはいずれも大学職員を目指す上で対策を進めていると十中八九目にすることになるサイトです。(「大学職員に就職・転職する方法」は例文集を参考にする際は注意が必要ですが、内容はまっとうです)
しかし先述の通り、その多くはおそらく推測で書かれているものばかりで実用性は皆無です。
見抜くのは大変かもしれませんが、薄っぺらいなーとか、こう言ったらこう返されるだろうけど返事に困るなーと思うものは参考にしない方が良いと思います。
ぜひ誤った情報にミスリードされないよう気をつけて情報収集してもらえたらと思います。