【実際に選考を通過した志望動機を掲載】大学事務職員への道Part⑤(医学部・附属病院を有する大学の場合)

これまで大学職員への転職ノウハウを色々と紹介してきましたが、そもそもひとえに大学といってもその種類は様々です。

私立大学もあれば国公立の大学もありますし、文系に特化した大学もあれば理系に特化した大学もあります。

中でも特殊な性質を持っているのが「医学部・附属病院」を有する大学です。
何が特殊かといえば、一般的に大学とは「教育」と「研究」の二つの事業に取り組む組織ですが、医学部を有する場合、そこにさらに「医療」が加わるからです。

そこでここでは「医学部・有する大学」の場合、働く上で他の大学とどのような違いがあるか、また転職を目指す上でどのようなことに気をつければ良いかなどを紹介していきます。

また、実際に選考を突破した志望動機を原文ママいくつか紹介しますので、そちらもぜひ参考にしていただければと思います。

医学部・附属病院があると何が変わる?

医学部を有する大学は必ず附属病院がセットになっており、附属病院も“学校法人(また国立/公立大学法人)の一部”という位置付けになります。
そのため、まず大きな違いとして勤務場所に「病院」という選択肢がある点です。
医学部がある大学といっても、医学部しかない大学もあれば医学部だけでなく複数の学部を有している大学もありますが、いずれにしても働く場所としては「大学本部」と「附属病院」の二つに分かれます。
そして規模にもよりますが、事務職員のうち3割〜7割くらいは病院配属となります。すなわち、大学職員といってもかなりの確率で病院勤務になることを想定しておかなければいけませんし、言い換えれば志望動機やキャリアビジョンを「教育」や「研究」にフォーカスしすぎると、「医療」に対する意識が気迫と見なされる可能性があるので注意が必要です。

また、附属病院は学校法人の一部ではありますが、主な管轄は文部科学省ではなく厚生労働省になります。そのため組織に適用される法令なども変わりますので、部署によっては専門的な知識や技術が求められるようになります。

院内の事務部門における病院ならではの部署というと「医事課」です。人事や経理などの管理部門ももちろんありますが、それらは病院であろうと一般的にイメージされる仕事と大差ありません。しかし医事課は病院以外には無い部署です。

医事課の仕事を一言で言えば“医療の現場で発生する事務作業全般”です。
業務は受付や会計窓口、治療費の請求及び入出金管理、医師の事務サポートなど非常に多岐に渡ります。ただし、多くの業務は医事業務を専門とする委託会社の外注スタッフに任せていることがほとんどです。病院に行くと受付や窓口で同じ制服を着ている人たちがいると思いますが、たいていその人たちは外注スタッフです。大学職員の医事課スタッフはその奥の事務室で、診療収入の精算や取りまとめ、厚労省等外部機関との連携や調整、医師との連携・調整などの業務に勤しんでおり、担当業務によっては患者さんとも直接やり取りすることもあります。

また、一緒に働くメンバーについても、大学部門では事務職以外だと「教員」くらいですが、病院には「医師」「看護師」「その他医療従事者」など様々な職種の人たちがおり、それぞれが異なる役割を担っています。立場によって意見も様々ですのが、それらを取りまとめるのも事務職員の仕事だったりするので、院内の調整業務が複雑になることが多々あります。

ステークホルダーも異なり、大学部門では学生(及びその保護者)が大学のサービスを受け、その対価を支払う立場ですが、病院は「患者」が相手になります。
ひとの命や健康を左右する事業ですので、責任感もさることながら、状況判断やフットワークなどのスピード感は圧倒的に大学部門より病院の方が早いです。

最後にもう一つ大きく異なる点は“収支構造”です。
大学部門の主な収入源は授業料収入ですので、年度当初に入学者数や在学者数が決まればその年度の予算額ははほぼ決まります。あとは予算をどう配分するかだけです。
しかし病院部門の収入は患者さんの数や治療内容に大きく左右されるため、大学部門よりも一層の経営管理が求められます。そのため意外にも経営面に関しては“事業会社に近い”感覚があります。

転職を目指す上での注意点

まずなんと言っても「病院で働くことへの理解」です。

いくつかの大学の採用試験を受けている人は、医学部のない大学と同じノリで受けてしまうと「病院で働く気はないのか?」という壁にぶつかってしまいます。

そこで、医学部しかない(あるいは医学部がメインの)大学の場合は、もはや病院で働くことを中心に考えた志望動機や自己PRにしてしまえばOKです。むしろ下手に教育・研究・医療の3つを取り込もうとすると一つひとつへの思い入れが希薄になりかねません。
ただし大学とはまた別の業界になるので、業界研究は別途必要になります。医療業界の大雑把な動向くらいは抑えておきましょう。現代だと、地域医療連携ネットワークの推進や遠隔診断の実施といった“地域全体を巻き込んだ医療の効率化”を国全体で進めています。また、ニュースでもよく取り上げられていますが医療費予算が削減されており、医療界全体が経済的に逼迫している傾向があります。

医学部だけでなく複数の大学の場合は、医学部のない大学と基本的には同じような構造でも問題なく、必ずしも医療に重きを置く必要はありません(もちろん医療重視でもOKです)。ただし病院で働くことをきちんと想定し、理解していることも“添える程度”にシナリオに組み込んでおきましょう。

志望動機の例文

それでは実際に選考を通過した例文をいくつか紹介します。
なお、ここで紹介する事例はいずれも「医学部に特化している大学」ですので、志望動機も医療や医学研究への興味に特化したつくりになっています。

順天堂大学

私は貴学にて、病院の財政や仕組みを考える立場から、医療サービスをより多くの人に提供する病院運営に貢献したいと思い、貴学を志望しました。

高齢化によって世の中に必要な病床数はどんどん増えているのに、医療人や各病院の規模はそれに応じて増えるわけではありません。そのため、効率的な病床管理を病院ごとではなく、社会全体で進めていく必要があると考えています。
貴学は学閥の垣根が全くと言っていいほどなく、また自由な競争環境があるということで、その自由な風土ゆえに他の同規模の大学病院と比べて一層の地域連携を進めることができ、今後の日本社会で強く求められる病院に発展する可能性があると感じています。そこに私自身も携わり、貢献したいと考えています。

また研究助成業務、具体的には研究成果を社会に還元していく技術移転や産学官連携業務にも強い興味を持っています。例えば産学連携により大学の知財を世の中に発信する際、大学事務にもっとノウハウがあればアカデミア側はもっと主導権を取れるのではないかと感じています。
貴学では、医学・スポーツ健康科学、医療看護学といった今後の日本社会において需要の大きい分野の研究科を有しており、その中で私は上記業務に従事し、技術移転に関する能力・ノウハウを身につけ、貴学の研究推進に貢献し、ひいては社会に貢献する仕事がしたいと考えています。(571字)

昭和大学

昭和大学は「転職理由」と「志望動機」に記入欄が分かれていたためそれぞれ紹介します。

転職理由

私は医療や医学研究に関する知見を深め、病院経営のスペシャリストを目指し、質の高い医療サービスをより多くの人に届けることができる病院運営に貢献したいと考えています。そこで医療機関や関連する研究機関で働きたいと考えたことが転職を決めた理由です。

これまで大学病院の経理や医学研究を含めた大学の研究推進部門を経験し、これからの日本の医療機関は時代の変化に応じてその在り方や役割、機能も変わっていかなければいけないし、変えていかなければならないと感じてきました。

また、病院の管理部門では「この地域における医療ニーズは何か」「この病院には何が求められ、そのニーズに対してどう応えるべきか」といったことを考え、そしてそれを実現するための取り組みに非常にやりがいを感じてきました。

そこで、病院経営のスペシャリストを目指し、日本の医療業界に貢献したいと思ったのですが、現在勤める大学は医学部のほか文系、理系の学部学科も有するため、必ずしも病院や医学研究に関わる業務に従事できるとは限りません。そこで医療分野を専門とする機関等への転職を決意しました。(465字)

志望動機

貴学は、800床を超える特定機能病院や藤が岡病院・北部病院といった地域医療支援病院、さらには特定の診療科に特化している専門的な病院など、役割・規模が異なる病院を複数有しているため、様々な医療現場を経験することができ、また多くの患者さんと関わることができる環境だと感じました。さらに学部・研究科も医系に特化しており、医療や医学研究に関わる事務のスペシャリストを目指す上で非常に魅力的な環境だと思いました。

また、医療界では特に患者さんから信頼される医師の育成や地域医療連携の推進、先進的な臨床研究の推進などが課題だと考えていますが、貴学の理念や現在の取り組みから、貴学でも同じようにそれらのことについて重点を置いていると感じました。

そこで、私自身も貴学における附属病院の管理部門や研究支援部門において、地域連携や臨床研究、そしてて地域社会のニーズに応える大学運営・病院運営にぜひ貢献したいと思ったことから、貴学職員を志望しました。(411字)

杏林大学

現職も大学職員ですが、やりがいはあるものの、国公立ということで予算に関する制限が厳しかったり市議会や市役所の意向に左右されることが多いため、より主体性のある私立大学で改めてチャレンジしたいと考えています。

とりわけ、地域の中核をなす大学病院の管理部門において、地域医療連携の推進など、今後一層社会に求められる病院運営に携わり、質の高い医療をより多くの人に提供することに貢献したいと考えています。
また、これまで大学職員として「研究」と「医療」の分野に携わってきたため、「教育」に力を入れている大学で教育分野にも挑戦し、大学職員としてさらなるキャリアアップを目指しています。

貴学は1,000床を超える地域医療の中核を担う特定機能病院の附属病院を有しており、医療に関する非常に貴重な経験ができると思い、また、教育理念や実際の取り組みにも強く共感したことから、貴学職員を志望しました。(383字)

まとめ

すでに大学職員および附属病院での勤務を経験しているため、少し参考にならない部分もあるかと思いますが、全体的な構成は概ね決まっており、

  • 医療の発展に貢献し、社会に貢献したい、という「大目標」
  • そのために病院経営のスペシャリストを目指したい、という「キャリアビジョン」
  • その大学及び附属病院の理念や取り組みに共感した、という「経営理念への共感」
  • その大学であれば自分のキャリアビジョンを実現できる、という「職場環境への興味」

この4つをなんとか組み合わせて、「だから貴学で働きたい」という方向に話を持っていくようにしています。

これまで医療業界にまったく縁もゆかりもないという人はエピソード作りに苦戦するかもしれませんが、そのままコピペで使える部分もあると思いますので、そういった人こそこのページの内容を参考にしてもらえればと思います。

おまけ(新型コロナウイルスの感染拡大を受けて)

2020年初頭に世界各地でパンデミックを引き起こし、世界経済に大打撃を与えた新型コロナウイルスの感染拡大。

2020年4月中頃においては未だ収束が見えない状況が続いています。

このような社会状況下において、感染患者の受け入れやウイルスの研究など大学病院は非常に重大な役割を担っています。

多くの人が苦しみ、中には自分の無力さに歯痒さを覚えた人もいたかもしれません。
あまりにも多くの犠牲を生んだ災害ですので、志望動機に利用できるエピソードとして推奨するつもりはありませんが、これを機に大学病院で働くことに興味を持ったり、日本の医療の発展に寄与したいと考える人が増えることは非常に素晴らしいことだと思います。

新型コロナウイルスを“利用する”ことは推奨しませんが、もし本当に上記のような気持ちを持った人であれば、医学部・附属病院を有する大学で働きたいと思ったきっかけとして新型コロナウイルス関連のエピソードを持ち出すのは大いにありだと思います。

安定性や待遇の良さに魅力を感じて大学職員を目指す人もいると思いますし、それは全然良いことだと思いますが、大学職員というのは仕事が楽で給料が良いだけの職業ではありません。
どの大学もそうですが、とりわけ医学部・附属病院を有する大学は社会にとてつもなく大きな影響を与える存在だということが今回のパンデミック騒動で露見されたと思います。

大学職員を目指す上で医学部・附属病院を有する大学も選択肢に入れる人は、そういった社会的使命を背負った仕事であるということを認識した上で採用試験に挑戦するのが良いのかなと思います。

Posted by official髷男dism